「肉や魚を徐々に加熱すると、“縮む→アクが出る→固まる→柔らかくなる”という4段階を経て変化していくが、いきなり強火で加熱すると、細胞が急激に縮まり、肉汁やうまみが流出し、硬くなってしまう。それだけでなく、アクや臭みも閉じ込めることになる」。
野菜を炒める場合も強火は厳禁だ。「野菜の細胞壁を覆っているペクチンは70~75℃で分解されるが、強火だと細胞壁が一気に破壊されて水分が流出し、水っぽい野菜炒めになる。弱火で加熱するとペクチンが温存されるため、歯ごたえやみずみずしさが残る」。
さらに、食品のうまみを逃さないためには、塩分濃度も大切だ。「肉、魚、野菜の重量に対して0・8%の塩分が、細胞内の水分が流出しにくい濃度。人間の体液の塩分濃度と同じなので、本能的においしく感じる濃度でもある」。
強火をやめて、0.8%の塩分濃度を心がけると、素材のおいしさが十分に引き出され、いつもの料理が劇的においしく!
“超”弱火は食材の「中」→「外」の順にゆっくり火を通していく
“超”弱火のメリット

出典:日本家政学会誌
❶ 栄養成分を逃さない!
弱火でゆっくり加熱することで、食材の細胞の急激な縮みを防ぎ、うまみ成分や栄養成分を必要以上に流出させない。例えば、牛もも肉を使った実験では、「92℃」「80℃」「70℃」で加熱したところ、「70℃」が肉からのたんぱく質の溶出が最も少なかった。
❷ 日持ちがいい!
野菜は強火で加熱すると、細胞壁の表面の膜が破壊されるため、大量の水が出るが、「弱火で炒めたモヤシは細胞壁が温存されるため、3日過ぎてもシャキシャキ感とうまみが残っている」 。
❸ 調味料が減る!
火加減とともに、味付けの基本である塩の使い方もマスターすれば鬼に金棒。「素材のおいしさを引き出す塩分濃度は0.8%。これを心がければ、余分なだしや調味料は必要なくなる」。目分量はやめて計量スプーンできっちり量ることを薦めている。
これで失敗がなくなり、料理の腕が上がりますよ!
揚げ物の外が焦げて中が半生、肉や魚のソテーが反り返る、煮込んだ肉が硬くてパサパサ……。「弱火クッキングは様子を見ながらゆっくり加熱するため、こういった失敗がなくなる」。
ぜひ、試してみてください。