会社の売上の8割はリピーターから生まれる

   

1.リピートにつながらない要因をかんがえる

経営学者のピーター・ドラッカーの言葉に、「会社の売上の8割はリピーターから生まれる」というものがあります。つまり、リピーターが増えれば会社の売上も増えると言ってもよい。
リピート率が向上しない理由はどこにあるのでしょうか。まずは現状の課題を分析することから考えてみましょう。

1:忘れられてしまう

例えば、とある飲食店に行ったとします。

料理も美味しいし、店員の接客態度も申し分なく、「良いお店を見つけた」と思ったことが誰しも一度はあるのではないでしょうか。しかし、何かきっかけがない限り、2回以上訪れる店は多くはないのでは。みなさんは圧倒的に1回しか行ったことがない店の方が多いと思います。

特に不満があるわけでなくても、再び利用するきっかけがないと、消費者は「リピートする」という行動を取りづらいもの。結果的に存在を忘れられてしまいます。

2:リピートする理由がない

人間の行動には、必ず何かしらの理由があります。例えば、食事をする理由は「お腹が空いたから」「ストレス発散をしたいから」「誰かとコミュニケーションを取るため」などが挙げられると思います。

リピートするという行動も全く同じ。顧客にとってリピートする理由がないから、リピート率向上につながらないということです。

3:値引きを売りにしている

新規顧客を開拓する際、何を売りにしているのかを少し考えてみましょう。

例えば「値引き、割引」を売りにしてはいませんか。

それ自体は悪いことではありません。しかし、「値引き、割引」を売りにして集まるのは、必然的に「安いから利用する顧客」です。そういう顧客の場合、常に安さを探し続けていますから、より安いサービス・商品を見つければ簡単に流出してしまいます。つまり、新規顧客を安さで集めるとその企業や店舗は“穴の空いたバケツ状態”になり、リピート率は低くなってしまいます。

4:従業員の対応が悪い

要因3で挙げた通り、値引きを売りにしている場合なかなかリピート率は向上しません。それは、会社・店舗のファンではないからです。逆に言えば、会社・店舗のファンになってもらえればリピートに繋がると言えるのではないでしょうか。

その重要な要因となるのが、接客スタッフや営業など、顧客と直接関わるポジションの従業員の対応。従業員の対応が良ければ、必然的に会社のファンを増やすことができます。実際、顧客が離れる理由第一位が「従業員の無関心」であるというデータも出ているようです。

つまり、顧客に対して無関心過ぎたり、反対に過剰にコミュニケーションを取り過ぎたり、対応方法を間違えれば顧客は離れていってしまうということ。「サービス・商品」といった物の質はもちろんですが、「○○さんがいるから行く」「○○さんから買いたい」という状態をつくることは、リピート率の向上に大きく寄与します。

2.リピートにつなげる販売戦略の秘訣

リピートにつながらない要因を把握したら、次は解決策の実行です。

ポイントは、「どの顧客に、どのタイミングで、どんな情報を提供してリピートに結びつけるか」を考えること。

既存顧客と言ってもさまざまにタイプがあります。「初めて商品・サービスを受けたお客様」「初回利用から間を開けずに2回目の利用があったお客様」「初回利用から2回以上の利用があったお客様」「長い間定期的に利用してくれるお客様」など分けられるためです。初回利用顧客と常連客に同じことをしても、効果は見込めないでしょう。そこで、ここではリピートに繋がる販売戦略を立てるための秘訣をご紹介していきたいと思います。

顧客をセグメンテーションする

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「一度しか利用したことがなく、サービス・商品に対する評価も曖昧な顧客」と、「何年も利用し続け、サービス・商品に対する理解も深い顧客」では、最適なコミュニケーションの取り方が異なってきます。そこで、顧客を類型化してみましょう。

セグメントする際の軸としては、下記が挙げられます。

地理:国、地域、地元など
デモ・グラフィック変数:年齢、性別、家族構成、所得、職業、教育水準、世代、国籍、社会階層など
サイコ・グラフィック変数:ライフスタイル、趣味嗜好、興味関心、価値観、購買意向など
購買活動:新規、見込み、リピートなど
購買心理:熱狂的、肯定的、無関心、否定的、敵対的などこれらを組み合わせて、顧客群を類型化していきます。

また、業界や商品特性によって変わります。様々な点を考慮して最適なセグメンテーション軸を決めていくことが大切です。

セグメンテーションした顧客に最適なアプローチをする

例えば、大きく「初めて商品・サービスを受けたお客様」「初回利用から間を開けずに2回目の利用があったお客様」「初回利用から2回以上の利用があったお客様」「長い間定期的に利用してくれるお客様」の4つにセグメンテーションしたとします。その場合、下記のようなアプローチが適切になることが分かります。

初めて商品・サービスを受けたお客様

初回客が2回目の利用をしない理由は2つ。

1つは、「バイヤーズリモース」です。バイヤーズリモースとは、買った直後に感じる後悔の感情のこと。サービス・商品の品質はほとんど関係がないと言われています。

2つ目は、接触不足のために忘れ去られてしまうことです。これらを踏まえて、

初回客に対して最適なアプローチは、「商品に対する満足度を高めながら接触頻度を増やすこと」が適切だと考えられます。

初回利用から間を開けずに2回目の利用があったお客様

2回以上利用しているということは、サービス・商品に満足している状態であることが分かります。しかし、まだつながりが浅いので、同じような商品がより低価格で出てきた時は乗り換えられてしまう恐れも。

そこで、商品だけでなく、あなたの会社・店舗に愛着を持ってもらう必要があります。会社に対して共感できるようなコンテンツを提供してみるのも1つの手です。

初回利用から2回以上の利用があるお客様

複数回利用しているということは、商品にも満足しており、あなたの会社・店舗にも愛着を持ってくれているお客様と言えます。しっかりコミュニケーションが取れている状態ですので、クロスセルで単価向上を狙いましょう。「クロスセルの商品を買うことでより良い状態を手に入れることができる」という事実をしっかり伝えること。商品についてや会社の魅力なども併せて提供することも効果的です。

長い間定期的に利用してくれるお客様

この顧客群は大切なパートナーとして認識しましょう。そして、会社を支えてくれていることに対して、しっかりと感謝を表す必要があります。

方法の1つとして、特別感を感じてもらえるスペシャルコンテンツを提供してみると良いでしょう。例えば、特別商品を用意したり、特別イベントに招待するなどです。そうすることで、さらにサービス・商品、会社・店舗に愛着を持ってくれるようになり、信頼度も維持することができます。

リピーターの数字を視覚化する

より効率的に改善をするために、「日次・週次・月次のサイクルで集計する」「数字の内訳を調べる」「リピートのスパンを調べる」といった部分に注目して数字を取ってみると良いでしょう。

3.商材別に見る、販売戦略の成功のポイント

例えば、美容院と化学品メーカーが同じ販売戦略を取って成功するでしょうか。美容院であれば、ポイントカードやクーポン券などの導入は有効な方法と言えますが、化学品メーカーでの導入は難しいですよね。

極端な例ですが、販売戦略の基礎は共通していても、商材ごとに成功のポイントが違ってくると思います。では、分かりやすい商材別の例を挙げて見比べてみましょう。

アパレル用品の場合

アパレル用品を扱う場合、繁忙期と閑散期があります。閑散期はなかなか集客につながらず、逆に繁忙期であっても客単価が低ければ利益は伸びません。そこで、客数と客単価の2軸でアプローチしていく必要があります。

バーゲンやセールの実施

前述した通り、値引き・割引を全面に出すことでリピート率は低くなりますが、「集客」という面で見れば1つの施策です。
例えば、季節ごとのセールだけでなく、「2点以上購入で●●円引き」といったまとめ買いを提案してみるのも良いでしょう。

ポイントカードを作る

購入額に応じてポイントを付与するカードを発行する方法です。
新規顧客数を増やすのではなく、リピーターを増やし、客数を伸ばします。

メールやSNSを活用する

顧客に対し、ダイレクトメールやSNSを通してセールなどの最新情報を提供することでリピーターを増やします。また、TwitterやFacebookなどのSNSを活用することで、新規顧客が増えるキッカケにもなるでしょう。

次に、客単価を上げる販売戦略について考えてみます。

特典をつけてまとめ買いを狙う

「●●円以上ご購入の方にはポイント△倍」「●●●と□□をお買い上げの方には、★★★をプレゼント」といった方法です。まとめ買いをしてもらうことで客単価を上げるという方法です。

クロスセルの提案

「この商品とこの商品を併せて使うことで、こんな風になる」と、まとめ買いをすることのお得感・効果をアピールする方法です。

複数商品の提案

「この商品には3グレードあって…」というように、似た商品の中でも価格帯の違う複数の商品を提案。顧客の高いもの=良いものという認識を利用して、より高い商品を買ってもらう方法です。

これらを組み合わせ、閑散期・繁忙期に関わらず一定の売上を上げられるように販売戦略を考えていきます。

食品や酒・飲料の場合

私たちが口にする食品や酒、飲料などは、他の商材と比較しても販売戦略が立てやすいジャンルと言えます。というのも、食べきってしまえばなくなるため、一度気に入ってもらえれば何度も買ってもらうことができるからです。つまり、リピーターを増やしやすい商材ということ。

それでいて、同じ商品でも生産者や産地が異なることで差別化を図りやすく、商品力を高めやすい点もポイント。差別化された特長を上手く使ったり、商品になるまでの過程をストーリー化すれば、顧客をファン化しやすい状況が生まれます。

このように商品力がある食品、酒、飲料などは、その商品力を「顧客の求める情報」として伝えることがポイントとなります。ストーリーなどを上手く使って、「ここでしか買えない商品」を生み出していき、ブランディングをしていきましょう。

4.販売戦略が成功している企業の実例

販売戦略の中でも特に成功したと言える事例をご紹介します。

セブンイレブン

シニア層をターゲットとしたサービスを顕著に展開しているのが、セブン-イレブンです。

例えば、宅配サービス「セブンミール」。国内最多店舗数を誇るセブン-イレブンですが、それでも高齢者にとっては訪れるのが困難な場合があります。そこで、食事を宅配するサービスをスタートしました。365日年中無休でサービスを展開しているので、一人暮らしの高齢者にとってはとても便利なサービスでありつつ、リピート率の向上に繋がるサービスとも言えます。

また、「セブンプレミアム」というPB商品を展開しているのはご存知でしょうか。惣菜が一品ずつ小分けされ袋に詰められているものです。「美味しいものを少しだけ食べたい」という高齢者層のニーズを汲んだ商品です。また、小分け商品は購入回数を高める効果があるため、来店頻度の向上、つまりリピーター客の増加も見込める戦略と言えます。

売上を拡大するためにどのような販売戦略を取れば良いのか、頭を悩ませている企業・店舗は多いのではないでしょうか。
今回はほんの一例ですがご参考になれば幸いです。

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